サンプルを掘り、地層を読む——現場で積み重なる専門知識
ボーリングマシンで地盤を掘削し、採取したコアサンプルから土質や地層の変化を読み取る。その結果が、建設工事の設計判断や安全管理に使われる。長原地質株式会社は広島県江田島市を拠点に、こうした地質・地盤調査を全国の建設現場で受け持つ会社だ。道路整備、橋梁工事、港湾建設といった社会インフラに先行する重要な工程を担っており、調査データの精度が工事全体の安全性に影響する。
代表・長原敏彦氏は約40年にわたって調査ボーリングの仕事に携わってきた。「もっと多くの人材を育てたい」という言葉を原動力に株式会社化し、元請会社との長年の信頼関係を土台に全国各地の案件に対応している。一現場に複数の工程が絡み合い、機材準備から片付けまでが連携して初めて成立する仕事の性質上、取引先との信頼の重みは特に大きい。
陸上と半々で受注する、海上ボーリングの専門性
長原地質株式会社の仕事の特色のひとつが、海上ボーリング調査への対応だ。港湾工事や海上構造物の建設に伴って、台船上に機材を設置しながら海底の地盤を掘削する。現在は陸上と海上がほぼ半々の比率という代表の発言は、この会社にとって海上案件が業務の基幹であることを示している。波・風・揺れという陸上にはない変数の中で機材を固定し、交通船との連絡調整も並行させながら作業を進めるのは、相応の経験と安全管理の習熟を必要とする現場だ。
「海上作業は緊張感が違う」という声が現場スタッフから出やすい、と聞いた。玉掛けや船舶関連資格の取得を会社として支援しており、実際の現場と資格学習を並行しながらスキルを積み上げられる。この会社で身につく海上調査の経験は、地質調査業界全体で見ても希少性が高い。
未経験の「最初の一歩」を丁寧に設計する
器具の名前から覚え始め、現場での立ち回り、ボーリングマシンの補助、サンプルの整理・分類——長原地質株式会社では、入社後の育成プロセスが具体的な手順として整理されている。先輩社員と同行しながら少しずつ作業を覚える形をとっており、いきなり難しい業務を任されることはない。現場ごとに土質・条件が異なるため、経験を積むごとに対応できる場面が増えていく仕事の構造が、技術の定着を後押しする。
「未経験でも段階的に成長できる」という声は定着しやすい職場のシグナルだが、長原地質株式会社の場合はその仕組みが具体的に作られている点が確認できた。経験豊富な技術者と未経験スタッフが同じ現場に立ち、困ったときに自然に声を掛け合える関係を大切にしている。年齢や経歴で壁を作らない姿勢が、教育の実質的な機能を支えている。
出張で全国を渡り歩き、休日に英気を養う
江田島市近辺だけでなく、全国各地の建設現場に出向いての調査対応が業務に含まれる。港湾工事の案件では海沿いの地域に出張することもあり、内陸の道路工事現場とは異なる景色の中で仕事が進む。出張が続く生活スタイルに対して、土日祝休みと長期休暇が設けられており、現場仕事で使う身体を十分に休める勤務体制が組まれている。「仕事が終わった後に各地の食や街並みを楽しめる」という話は、この仕事特有の体験として語られることが多い。
正直、取材を通じて最も印象的だったのは、安全と現場の雰囲気づくりを両立させようとしている代表の姿勢だ。「セイフティ・スマイル」を同じ行動指針に並べることには、安全管理が機能するためには職場の空気が欠かせないという実感が込められているように感じた。


